近年、AIの進化が著しく、パソコンの世界にもその影響が広がっています。特にAI対応のパソコン、いわゆるAI PCは
従来のパソコンとは異なる利便性や処理速度を提供し、ビジネスから日常の作業まで幅広い活用が期待されています。
この記事では、AI PCの特徴や何ができるのかについて解説します。
AI PCってなに?
AI PC(AI パソコン)とは、AI処理に特化したプロセッサーである「NPU(ニューラルプロセッシングユニット)」を搭載した
パソコンのことを言います。従来、PCの計算は主にCPUやGPUを使用していましたが、AI PCはこれに加えてNPUを組み込むことで、AI関連のタスクをより効率的に処理できるようになっています。
2024年2月27日、Intel社とMicrosoft社は、AI処理を高速に行える「AI PC」の定義を共同で下記のように定めました。
Intel社とMicrosoft社が共同で定めたAI PCの要件は以下の3つです。
- 「Copilot」に対応していること
- 「Copilotキー」を搭載すること
- CPUとGPUに加えてNPUを搭載すること
また、AMD社が定めた要件もあります。
- CPUとGPUに加えてNPUを搭載すること
- NPUが10TOPS以上であること
そして2024年5月20日、Microsoft社が米国で開催した記者会見の場で、よりスペックの高い「Copilot+ PC」を発表し
翌5月21日には「Copilot+ PC」の要件を発表しました。
Microsoft社が掲げる「Copilot+ PC」の要件は以下の通りで、この要件を満たしたPCだけが「Copilot+ PC」を名乗れるようになっています。
- Microsoftが独自に承認したSoCでかつ、40TOPS以上のNPUを搭載していること
※2025年1月現時点では(1)の要件を満たしているSoCはQualcomm社のSnapdragon X Elite/Plusのみ - メインメモリ16GB以上(DDR5/LPDDR5規格メモリ)
- 256GB以上のストレージ(SSDないしはUFS)
AI PCでよく聞く機能について
AI PCに搭載されている各機能ですが、具体的にどのようなものか知ることも大切です。
- Copilot
Copilotは Windowsに実装された AIアシスタント機能です。Windowsユーザーであれば誰でも使用することができます。
チャットベースで質問や指示を投げかければ、AIが適切な回答を返してくれます。Copilotを使えばタスクの自動化、情報の整理、データ分析など、AIを活用した幅広いサポートを利用することができるため、日常のパソコン作業をより効率的に進めることができるでしょう。 - Copilot+
Windows 11で既に搭載されている「Copilot」(コパイロット)は、主にMicrosoftのクラウドサーバー側で実行されるのに対し、「Copilot+」(コパイロットプラス)は手元のパソコンのハードウェアを使ってローカルで実行される点が大きな違いとなります。 - Copilotキー
AI PCには、独自の「Copilotキー」が搭載されています。このキーは、AI機能を瞬時に起動できる専用ボタンで、より簡単な操作でAIを活用できるようになりました。特にビジネスシーンやクリエイティブな作業では、Copilotキーを使うことによって作業効率を大幅にアップさせることができるでしょう。 - NPU
CPUやGPUよりも高い電力効率でAI推論処理できる専用プロセッサのことです。AI処理に特化したNPUを搭載することで、画像認識や自然言語処理などのAIタスクをスムーズに行えるようになりました。例えば、画像認識タスクを実行する際、従来のCPUやGPUに比べてNPUは数倍の速度で処理を進めることができるため、作業効率の向上が期待できます。 - TOPS
“システムが1秒間に何兆回の演算を実行できるか”を示すものです。例えば、10TOPSならば、1秒間に10兆回の演算が実行できるコンピューティングパワーを表します。TOPSは、システム全体のパフォーマンスを測定するために使用できますが、特定のハードウェアを分割して測定することもでき、例えばAI PCにおけるニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)の処理能力を表す指標として、このTOPSが最近ではよく用いられています。
AI PCと従来のパソコンとの違い
AIパソコンと従来のパソコンとの主な違いは、AI機能のローカル処理を担うNPUを搭載していることや、MicrosoftのCopilot in Windowsに対応していることです。ここでは、その具体的な違いやAIパソコンの普及が進む背景について解説します。
- AI機能のローカル処理を担うNPUを搭載している
AIパソコンの特徴的なパーツは、NPU(Neural Processing Unit)と呼ばれるAI機能のローカル処理を専門に行うプロセッサです。
従来のCPUやGPUとは異なり、AIの演算に特化した設計になっています。CPUが汎用的な処理を担当し、GPUが画像処理を得意とするのに対し、NPUはAIの計算を高速かつ効率的に実行します。例えば、画像認識や自然言語処理などのAI機能を、インターネットに接続せずローカル処理が可能です。これにより、AIアプリの応答速度が向上し、プライバシー保護にも役立ちます。 - Microsoftの「Copilot in Windows」に対応している
AIパソコンは、MicrosoftのCopilot in Windowsに対応しています。Copilot in Windowsは、Windows OSに統合されたAIアシスタント機能です。AIパソコンは、NPUの処理能力を活かしてCopilot in Windowsをスムーズに動作させることが可能です。
ユーザーの作業をサポートし、生産性を向上させる以下のような機能を提供します。・自然言語による操作支援
・文章の要約や作成補助
・画像生成や編集サポート
・プログラミングのコード補完
・スケジュール管理のアシスト
これらの機能により、ユーザーは日常的なタスクをより効率的にこなすことができます。なお、AIパソコンはCopilot in Windowsを起動できるCopilotキーを搭載しています。
AI PCを使用するメリット
AI PCは高速なAI処理能力と効率的な作業支援機能を備えており、従来のパソコンでは実現できなかったスムーズなAI処理が
可能です。業務の効率化や作業時間の短縮に貢献するなど、AI PCを使用することによるメリットについて順番に見ていきましょう。
- 処理能力の高速化
AI PCは搭載されたNPUを利用してデータをAI処理するため、膨大な量のデータでも瞬時に分析することが可能です。
(NPUを使用して処理するかどうかはソフトウエア側で設定されます)。 - セキュリティリスクを抑えられる
AI PCは、クラウドではなくPCに搭載されたNPUでローカル処理できるため、情報を外部に出さず、セキュリティリスクを抑えられます。 - 消費電力の低減
従来のPCでは、デバイス上でAI処理を行うと負荷が大きいため時間がかかり、消費電力を大きく使っていました。一方、AI PCに搭載されているNPUはAIの推論処理を高速化するためのプロセッサであるため、消費電力を抑えてスムーズに処理することができます。 - 高速なAI処理ができる
NPUを搭載したことにより、従来のCPUやGPUでは処理に時間がかかるようなAIタスクでも迅速にこなすことができるようになりました。画像認識や自然言語処理といった複雑なタスクも短時間で結果を得ることができるため、作業効率が大幅に向上します。
AI PCでできること
AI PCは、従来のPCにAI処理専用のチップが搭載されたもので、様々な作業を効率化できます。
- 画像や文章の生成
AI PCなら、クラウドを介さずとも画像や文章の生成ができます。「Cocreator」がその一例です。
Cocreatorは、手書きのイラストとテキストプロンプトを組み合わせ、ほぼリアルタイムで新しい画像を生成できます。
※Cocreatorは、Windows標準アプリである「ペイント」に搭載される生成AI機能です。 - PC内の情報検索
AI PCを使えば、PC内の情報検索もできます。Webの検索履歴やメールなどの情報をPCが記憶してくれるので、記憶が曖昧なときでもすぐにほしい情報を引き出せるのがポイントです。Copilot+ PCなどに搭載されているRecallの機能を使えば、OutlookのメールやTeamsのチャットなど、希望の画面をワンタッチで開けます。
※Recallは、ユーザーがPC上で見たものやおこなった操作/作業などを後から遡って確認できるようにするAI機能です。
- リアルタイムな翻訳
AI PCなら、リアルタイムな翻訳もできます。NPUを活用した機能「Live Captions」が代表例で、あらゆる音声を素早く英語字幕に変換できるのが特徴です。現状、「Live Captions」は40以上の言語に対応しているので、翻訳業務において幅広い活躍が期待できます。
録音した音声にも対応できるので、ビデオ会議の振り返りなどにも便利です。
※Live Captions、はAIパソコンのリアルタイム音声認識と翻訳技術を組み合わせたツールです。
一見、これらの3つは従来のPCでもできそうですが、AI PCはタスク処理がすべてPCの内部で完結する点が特徴です。
クラウドを介さないため、処理速度やセキュリティ面の向上が見込めます。
AI PCを選ぶ際のスペックは?
AI PCを選ぶ際は、用途に合うスペックを選ぶことが大切です。AIパソコンの性能を最大限に引き出すためには、各パーツのバランスも重要な要素となります。以下の表で、主要なチェックポイントと推奨スペックを解説します。
スペック | 推奨 | 説明 |
---|---|---|
CPU | ・Intel Core Ultra ・AMD Ryzen AIシリーズ |
・パソコン全体のデータ処理を行う ・AI処理に特化したNPU内蔵のCPUを選択する |
メモリ | 16GB以上 | ・データの一時的な保存を行う ・AI処理には大量のデータを扱うため、多いほど有利になる |
GPU | ・内蔵GPU ・NVIDIA RTX ・AMD Radeon RX |
・主に画像処理を行う ・専用グラフィックボードに搭載されたGPUは、画像生成AIなどの処理を高速化する ・画像処理を利用しない場合は内蔵GPUを選択する |
ストレージ | 512GB SSD以上 | ・データの長期的な保存を行う ・512GBを目安に、画像や動画、その他ファイル量に応じて選択する |
これらのスペックは、使用目的によって適切な選択が異なります。
例えば、画像生成AIを頻繁に使用する場合は、より高性能なGPUが必要になります。
また、大量のデータを扱う機械学習を行う場合は、メモリとストレージの容量を重視するとよいでしょう。
まとめ
AI PCは2024年から本格的に普及し始めたばかりということもあり、従来のパソコンと比べて選択肢は限られています。
現時点では、主要メーカーから数モデルが販売されている程度です。しかし、これからAI PCを使ってできることがさらに増えていくことが期待されています。セキュリティを重視する企業や、Copilotをフル活用したいビジネスパーソン、クリエイティブワークやコンテンツ制作で頻繁にAIを使用している方は導入を検討しても良いでしょう。
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